ご 挨 拶

静岡化学工学懇話会
   会長(平成24,25年度) 三谷 優
(サッポロビール株式会社)

 本懇話会のWeb siteをご覧になられますと設立以降の歴史を毎年1回出版される会報から紐解くことができます。平成4年(1992年)の設立から本年度で20年を経るに至ります。この間に、静岡大学を始めとする諸先生方が担い手となられて上部組織である化学工学会の年会や秋季大会などの大イベントを担当し、平成22年度には同学会より地域CT賞(地域貢献活動で顕著な成果があった団体等に贈られる賞)が授与されました。
 斯く言う私は、本懇話会設立発起人の方々から県内在住の化学工学会員に送付された「正会員は懇話会費免除」とのお知らせに誘われて入会申込みを致しましたが、しばらくは幽霊会員でした。思い返してみますと平成12年ごろから出席率が増えていました。出席回数アップの直接の誘引要素は当懇話会設立当初からのビジョンであります「静岡県地域の産学官交流を通じて学際的・業際的に活発な人材交流を行う」に他なりません。自組織とは異なる業種企業の工場製造現場や研究開発事業場の見学は大変魅力的な行事でありました。加えて、横軸と称する交流会の場では開発ヒントをいただいて、発展的にご一緒に仕事をさせていただく機会も得ました。そういう受益者側にいた者が、ある年、「役員なるものをお引き受けするのが果たして適切なのだろうか」と考える時間もあまりないまま副会長をお受けし、慣例に従って本年は会長の大役を仰せつかるに至りました。
 ところで、今日、好調な経済状態を保つ先進国は多くありません。今日の景気低迷は、日本や米国で所謂バブル経済(土地バブルとかITバブル)が崩壊して景気悪化に突入したのとは必ずしも同じではないように思われます。当時の不況期はG7プラスEU内で交互に浮き沈みしていたのですが、今は国際市場のプレイヤーが増えて、しかも、新興国の技術水準の向上で、先進国側の沈みが目立ちます。何年か前に、「上海のレストランの店員賃金が1時間2ドル(USD換算)であるのに対してニューヨークでは20ドル、東京は10ドル弱」という記事を読みました。労働集約型産業の新興国での発展段階はすでに成し遂げられ、今では一般消費財だけでなく生産財や資本財市場にまで先進国企業のコンペティターが参入しています。EU国の中には自国経済に見切りをつけて新興国に出稼ぎに行く人が増加し、国家財政のデフォルトをようやく逃れようという国が実は既に発展途上国なみの経済状況であるとも言われています。翻って日本の状況はというと、平成23年は東北地方の震災とタイの大洪水の影響で一時的に貿易収支が赤字になりました。今年以降について、「円高も一服して持ち直すだろう」と経済人は解説しています。「Sustainability」という言葉を環境技術に携わる(私も含めて)技術者は、自説である地球環境悪化からの克服を唱えるために頻繁に使用してきました。これは経済活動や研究開発の倫理感や信念に根ざしたものでした。ところが、今日あれこれの記事から目に入ってくる「サステナビリティ」は企業経営存続だけでなく国の経済活動存続にまでも用いられる言葉になったのではないでしょうか。
 話題がやや拡散してしまいました。私たちは静岡県つながりの懇話会です。この地に根をおいている者として「やらまいか」「やらざあ」をしぶとく追い求めねばならない時代環境下に活動していると思います。経済の根幹は活発な産業活動であり、これを支えるのは技術・研究開発です。懇話会に所属の諸先生・諸兄姉方にはそれぞれ国内外で技術・研究開発に立脚してご活躍されるお立場にあろうと存じますので、当懇話会を産業隆盛へのインキュベーションの場、明日を築く人々の交流の場としていただきたく、ご支援ご協力を何卒よろしくお願いします。



Topへもどる