① 構造体触媒(Structured catalyst)
天然ガス(メタンやプロパン)からクリーンエネルギーの水素へ化学変換
亜臨界流体でバイオマスをバイオ系アルコールへ化学変換
バイオ系アルコールからクリーンエネルギーの水素へ化学変換


  化学反応場と熱エネルギーの伝熱場とを一体化した構造体触媒(Structured catalyst,図 (a))は,通常の粒状触媒(充填タイプ,図(b))と比較して,エネルギーの交換性や物質移動の制御性にすぐれ,高い原料処理能力と迅速な応答性を与えます。言わば,高次機能性を保有する新しい触媒材料です。この研究では,燃料電池発電などで新エネルギーとして期待される水素エネルギーの製造反応=水蒸気改質反応(Steam reforming,大きな吸熱反応)に適した構造体触媒を開発すべく,触媒調製法の検討やその触媒性能の評価を行なっています。原料は天然ガスやバイオ系のアルコールです。


 この構造体触媒の開発は,低炭素社会の構築につながるエネルギーシフトを推進します。また,構造体触媒の低圧力損失性を生かし,亜臨界水中で非食料セルロースからアルコールへの化学変換に関する研究も行なっています。
② ペロブスカイト型酸化物触媒(Perovskite-type catalyst)
炭化水素や芳香族化合物をファインケミストリー原料へ化学変換
ペロブスカイト型構造体(プレート型)触媒の創製



① 有機ハイドライドによるエネルギーキャリア型触媒反応システムの研究
 太陽エネルギーや風力エネルギーが豊富な場所で水素キャリアの有機ハイドライド(メチルシクロヘキサンなど)を合成し、日本に海上輸送して脱水素反応で水素を取り出し、燃料電池自動車や家庭内燃料電池を駆動させる。そんなグローバルな水素キャリアシステムが他機関との共同プロジェクト研究としてスタートしました。当研究室では脱水素触媒の開発と脱水素反応システムの開発を担当し、そのための構造体触媒システムに関した研究に取り組んでいます。
② 機能複合型触媒反応システム
ヒートコンバインド型化学反応システムの開発とその特性評価
改質機能とCO除去機能のコンパクトカップリング型化学反応システムの開発

 工業的な化学反応プロセスは,通常いくつかの工程で構成されます。例えば水素製造プロセスは,原料の脱硫工程→水蒸気改質工程→CO変成(除去)工程で構成され,そのため装置自体が大型になります。しかし,燃料電池による家庭内発電やFCV自動車,あるいはオンサイト型水素ステーションにおける水素製造では,反応プロセス自体の省スペース化が求められます。
 コンパクトカップリング型化学反応システムの研究では,水蒸気改質工程とCO変成工程をひとつの反応器内にコンパクトに収納したシステムを作製し,その特性を評価しています。触媒は,伝熱性とコンパクト性にすぐれた構造体触媒です。また,この構造体触媒の特長を生かし,壁を隔てて触媒燃焼(発熱)を同時に進行させて改質エネルギーを確保するヒートコンバインド型改質システムの特性を評価しています。通常のバーナー加熱や電気加熱よりも,コンパクトで効率的な加熱方式であることが明らかになりつつあります。
③ マイクロ空間を特殊反応場とする触媒反応システム
小型燃料電池用水素製造システムの開発

 微小なマイクロ空間(μm~mmオーダー)を化学反応場とした場合,化学物質の移動性や熱エネルギーの制御性が向上し,通常の反応器では得られないような反応特性の発現を可能にします。この研究では,モバイルタイプやポータブルタイプの燃料電池発電システム用小型水素製造システムを構築するために,マイクロ空間を触媒化する方法や作製した小型触媒材料の化学反応特性を評価しています。このシステムは,マクロサイズの化学反応場が示す触媒特性よりもかなり高い機能性を発現することがわかってきました。



① CO2を資源に化学変換する構造体触媒
ドライリフォーミングによるCO2の合成ガスへの化学変換
 温室効果ガスであるCO2とCH4を触媒存在下で化学反応させると,工業的に有用な合成ガス(CO+H2)が製造されます。この反応はドライリフォーミング(CO2 + CH4 → 2CO + 2H2)と呼ばれています。CO2削減の昨今の問題解決にも貢献する化学反応です。ポイントの一つは,この化学反応を促進する触媒として,①触媒表面上への炭素析出性が低く,劣化しにくいこと,②大量のCO2処理が可能な触媒形態であること,などが求められることです。先に紹介した構造体触媒は原料の大量処理が可能です。そこでこの研究では,ハニカムフィン型構造体基材の上にドライリフォーミング活性な触媒成分を創出し,その改質特性を評価しています。
② 製鉄排煙ガスの高速化学変換を図る構造体触媒
高速メタン化反応による炉排ガスからの資源ガス化
 製鉄排煙ガスには大量のCO2が含まれていますが,同時にH2もかなりの量で存在します。この排ガスからCO2をH2で高速化学変換できれば,環境保全にもつながります。そこで,高速で大量処理を可能とする構造体触媒の開発も行なっています。






 当研究室では数値シミュレーションに関する以下のような研究テーマにも取り組んでおり,実験面ばかりでなく理論的な面からもシステムの特性解析を行なっています。
① 熱エネルギーの相互利用型化学反応システムの特性解析

② コンパクトな傾斜機能性型化学反応システムの特性解析

③ マイクロ空間を特殊反応場とする触媒反応システムの特性解析