会長からのご挨拶

静岡化学工学懇話会
   会長(令和7年度) 菅 公一

会長の任期は2期(2年)を基本としておりますが、今期も引き続き務させて頂く予定でおりますので、皆様のご協力をよろしくお願い致します。

静岡化学工学懇話会は、化学工学会東海支部と連動した形で平成4年(1992年)に静岡県地区での産官学の交流の促進と活性化を目的として発足しました。発足以来、化学分野の業種に限らず、機械、電気、材料、エネルギー、環境、食品、情報など広範な分野と交流しております。

令和7年度の社会経済環境はアメリカ合衆国のトランプ大統領の動向で大きく変動する可能性があります。3月26日、米国が輸入する自動車に4月3日から25 %の関税を課すよう命じる大統領令に署名しており、対象は全ての貿易相手国からの車で、当然日本車も含まれます。現在、米国は日本からの乗用車に2.5%の関税を課しており今回では27.5 %の関税となります(令和7年4月22日時点)。日本からアメリカに輸出される品目の中で、金額が最も大きいのが乗用車やトラックを含む「自動車」で、2024年の1年間では、6兆261億円と輸出額全体の28.3%を占めております。日本の外交努力が重要となるところですが、日本銀行植田和男総裁の対応にも注視しております。関連各社にとっては為替の動き(操作)で停滞無く進む可能性も出てきました。静岡県は一大生産拠点として大手各社が揃っており、現状の中国一辺倒から東南アジアにも目を向けた展開が今後の楽しみの一つです。為替の動きと連動しますが国内生産に回帰する動きもあり、人材確保の問題が解消できれば、景気が良い方向に向かうと信じております。

環境対応においてはEUとの協調から、日本においても独自路線を進む方向が見え始めております。EU主導で始まった全EV化の挫折は特徴的な例です。EV関連でもトヨタ自動車の揺るぎない対応は、批判から評価される事に変化しました。環境に関する真のデータが何かを再確認する良い機会と捉えております。

原油価格は化学工業にとっても大変重要であり、トランプ関税が経済を減速させ、石油需要を抑制するとの懸念もありますが、資源の問題で引き続き価格はゆるやかに上昇傾向にあります。引き続き化学工学を用いた省エネ技術の進展が望まれます。

最後の締めは毎回同じになりますが、敢えて書かせて頂きます。日本では八百万の神の信仰思想から、物にも神が宿るといいます。そこには長い時間磨き上げた熟練の技術を持つ職人の手を介した各製品についてさまざまな伝承をしてきた歴史があります。それらは高いレベルで多くの人々の手を介した工業製品につながり、数多くの奇跡を見せてくれました。化学工業界においても、より多くのエンジニアの技術と思いを載せて前進してくれると信じております。その輝かしい化学工学の未来に向かって