会長からのご挨拶

静岡化学工学懇話会
   会長(令和4・5年度) 菅 公一

静岡化学工学懇話会は、化学工学会東海支部と連動した形で平成4年(1992年)に静岡県地区での産官学の交流の促進と活性化を目的に発足しました。発足以来、化学分野の業種に限らず、機械、電気、材料、エネルギー、環境、食品、情報など広範囲の分野と交流しております。本会はSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを行っておりますが、進展しているようで中々成果が見えにくい課題です。その中でも環境問題は重要な課題となっており、原子力、火力、水力、地熱発電、太陽光など多種を使用する電力は決定打がないのが現状です。その原因は国や地域の事情が大きく影響していると思われます。自動車を例に挙げると欧州「2035年EV化法案」があります。2021年7月14日、欧州連合(EU)の欧州委員会は「気候変動対策に関する包括的な法案の政策文書(コミュニケーション)」を発表し、その中で、EUでは2035年以降の新車登録を、ゼロエミッション車(走行時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない車両)に限定する方針を示しました。ゼロエミッション車は電気自動車と燃料電池車を念頭に置いて推進する計画でした。当初は一枚岩に見えたEU各国ですが、今年3月7日にドイツがゼロエミッション車にe-fuel(再エネ由来の水素を用いた合成燃料)のみで走行する内燃機関(ICE)車を含めない限り、法案を支持しないと表明し、イタリア、ポーランドも同調した為、合意には至ってない状況となりました。元々火力に頼っている日本ではEV化には慎重で、二正面戦術のトヨタ自動車にも追い風が吹く状況に急変しました。このことはいろいろな批判があった中でも現実を直視し真摯に対応する事が重要だと気づかされた例となりました。本会も地に足をつけて活動することが大切だと考えております。

今年5月8日より新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置づけが5類感染症に移行されました。マスクについても3月13日より個人の判断に委ねられております。本会行事も今年度より会員同士の交流の場として懇親会を積極的に開催して行きたいと考えております。皆様のご参加をお待ちしております。

化学工学の発展には人材が欠かせません。新規会員の獲得や人材の育成が必要ですが、基になるのは子供達です。今年も子供達を対象にした理科倶楽部などを開催して理科への興味を深めて行きたいと考えております。

関係者皆様のご協力で昨年設立30周年を迎え11月25日金曜日に記念行事をアクトシティ浜松の会議場にて無事開催できました。誠にありがとうございます。本会が40周年、50周年に向けて続いていく事を祈念しております。

最後に、日本では八百万の神の信仰思想から、物にも神が宿るといいます。そこには長い時間磨き上げた技術を持つ職人の手を介した各製品についてさまざまな伝承をしてきた歴史があります。それらは高いレベルで多くの人々の手を介した工業製品につながり、数多くの奇跡を見せてくれました。化学工業界においてもより多くのエンジニアの技術と思いを載せて前進してくれると信じております。その輝かしい化学工学の未来に向かって